てぃーだブログ › お金は無限に発行できる › アイディア › お金は無限に発行できる 第五章(後半) 万年筆マネー

2022年06月27日

お金は無限に発行できる 第五章(後半) 万年筆マネー

お金は無限に発行できる 第五章(後半) 万年筆マネー

第五章(後半) 万年筆マネー

「万年筆マネー」

ゴールドスミスJRは、銀行経営を立て直すために、8人の子どもたちを集め、戦略会議を開きました。

ここでは、お父さんのゴールドスミスJRと、その長男、次男の、3人の会話だけで話を進めます。他の子供たちは、黙って聞いていると言う設定です。

8つの銀行の帳簿にある数字を、何十年もの金貨の出し入れの記録を、金匠手形の発行から流通量まで、全てに見直しをかけました。

ゴールドスミスJRは、8つの銀行の金庫に預けられている金貨の総数や金匠手形の発行量を、子供たちに尋ねました。

みんなの報告をまとめると、8つの銀行の金庫に眠っている金貨の総数は、300億枚でした。次に、発行された金匠手形は、450億枚でした。

・金貨の総数300億枚
・金匠手形 450億枚分

ゴールドスミスJR(以下GSJ)は言いました。

GSJ 「我々は、150億枚の金貨を誰かに貸しているのだな」

長男「そうなりますね。私たちは、金貨を150億枚貸し出しています。

次男 「何でそうなるの?何で金貨を150億枚貸していることになってしまうの?僕たちは、金匠手形を450億枚発行しているのに、その数字、間違っていないかな?」

GSJ 「よく聞け、息子たちよ。預けられた金貨は300だとして、発行された金匠手形は450だ。450 - 300 = 150 だから、150億枚の金貨を貸していることになる。簡単な引き算をすれば分かると思うがな」

長男「父さん、その説明は良くありません。銀行が金貨を貸していると言うと、余計に分かりにくくなると思います。私たちは、金貨を貸してはいることにはなっていますが、実際には貸してはいません。金匠手形を渡しているだけです」

GSJ 「そうだな。金貨と交換できる金匠手形を渡しているだけだからな」

次男「まだ、分かりません。僕でも引き算はできます。僕が分からないのは、なぜ、貸し出された金匠手形を導き出すために、発行された金匠手形450億枚から、預かっている金貨の300億枚を引かなければならないかが、理解できないのです」

長男「俺の話も聞けないほど、動揺しているみたいだな。金貨は預かっていない。借りているんだ」

GSJ 「私が悪かったかもしれないな。すまない。改めて、言うぞ。私たちは金貨を預かってはいない。金貨300億枚は、借りているのだ。そして、簡単に言うと、金匠手形は、2種類あるから、差し引いたんだ」

長男 「父さん、いきなり2種類で説明するのは難しいと思います。そのような説明では、誰もついてこれません」

GSJ 「そうだな。まずは、貸し借りの話が必要だ。金貨を借りる。金貨を貸す。金貨を借りた。金貨を貸せたと言う話だ。そして金貨を預かる言うことの本当の意味を知らなくてはいけない。そこから話を進めていくべきだった」

次男「全く意味が分かりません」

長男「お父さんの言う通りですね。金貨を預かると言うことの本当の意味を、弟たちは、全く理解できていないようです。これは難問です。私もはっきり理解できているのか分かりません。」

GSJ「そうか。では、はっきりさせよう。我々全員が、相当な借金をしてる。そのことを、長らく秘密にしていた。これは、銀行ビジネスの、専売特許みたいなものだ。ここが、私たちビジネスの最前線の砦になるから、なかなか説明する機会がなかった。周りの人たちにも、家族にも、気づかれないように、金貨を預かっていると言ってきたからな。悪いのは私の方かもしれない。」

長男「まぁ、お父さん、仕方ありませんよ。私たちのビジネスは、手品みたいなものです。誰にでも簡単に理解されては、逆に困りますよ。とにかく、俺たち全員の、8つの銀行が借りている金貨の枚数は、合わせて、合計金貨300億枚になる。それが、俺たちの借りている金貨の枚数なのだ」

次男 「300億枚?」

GSJ「そうだ。それが、我々が借りている金貨の枚数だ」

次男「金貨300億枚は、預かっているのですよね」

長男「そうだ。預かっている金貨は、借りている金貨と言うことだ。だから、同じ枚数、金貨300億枚になっている」

次男 「預かっている金貨は、借りていることになるのですか?変な話ですね」

GSJ「そうだ。きちんと理解できている者はほとんどいない。今日まで、我々の中でもだ。我々は、金貨を預かっていると思わせているのだ。しかし、意図的ではない。皆んなが預けに行くと言うから、ずっと、ほったらかしにしていただけだ。後から考えてみると、その方が、我々にとっても、預けに来る者にはとっても、都合が良いことも分かっていた。だから、あえて訂正はしなかったのだ。昔からそう、今でもそう、皆んなは、金貨を預けていると思っているから、今更、言う必要もない。慣習みたいなものだ。そこに、我々の悪意はない」

私たちの銀行預金は、銀行にとって負債です。

このようなことは、現代の銀行でも同じです。私たちは、銀行にお金を預けに行くといいます。確かに、銀行はお金を預かっているのですが、私たちは、銀行に預かり料を支払うことはありません。逆に、預けたお金には、利子がつきます。利子を支払うのは銀行なので、銀行は、私たちからお金を借りていることになっています。実際に、銀行の帳簿上も、そのように記録されています。私たちの預金は、銀行の負債になるのです。

さらに、会議は続きます。

GSJ「そこで、おじいちゃんの時代は、金貨を預かって、預かり料をいただいて、それを利益にしていたと言う話は聞いたことがあるはずだ」

次男「はい。知っています。おじいちゃんの頃は、大儲けしていたと言う話ですね。預り料も、金貨を貸した時の利子も、ダブルで儲かっていたのですよね。そのことで、お父さんの時に、一度、暴動が起きたんですよね。確か、お父さんの幼馴染が、俺たちの預けている金貨を、貸して儲かっているくせに、俺たちに少しは分け前をよこせっていイチャモンをつけてきたと言う、その話ですよね」

GSJ 「そうだ。あれは、大ピンチだった。あの事件以来、預かり料は廃止にしたのだ。幼馴染の意見にも一理ある。あれは私も反省させられる出来事だった。それから、逆に、金貨を預けてくれた人に、利子を払うようになったんだ。だから、その時から、金貨は預かっているのではなく、借りていることになった。貸金庫業(倉庫)は廃止になって、本格的に、貸金業、貸付業になったと言うことだ。今では、我々のビジネスを、人は銀行と呼ぶようになった。しかし、最初、銀行になった頃は、入ってくる利益、預り料は無くなったのに、出て行く利子が発生したから、経営が苦しくなったのは事実だ。踏んだり蹴ったりとは、このことだと思っていたけどね」

長男「踏んだり蹴ったりと言うよりは、踏まれたり蹴られたりですね」

GSJ「本当だな。あの頃だったら笑えないが、良い表現だ。しかし、逆境はチャンスだとよく言うが、あの事件のおかげで、我々は、貸金庫業から、今の銀行業に進化できたんだよ。今では、幼馴染に感謝さえしている。彼は、私に大きなチャンスを与えてくれたんだな。そのために彼は生まれてきたのかもしれない。彼とランチでもしたくなってきたよ」

子供たちは、お父さんの苦労話をよく聞かされていましたが、まだ、本当の秘密には気がついていない様子です。「我々は金貨を預かっているのではない。我々は金貨を借りている」、ここまでは、全員が理解できたようです。

GSJ「よく聞け、子供たちよ。銀行を経営するためには、いくつか、分けて考えないといけないことがある。私たちは、金貨を貸しているが、金貨を貸しているわけではない。金貨と交換できる金匠手形を発行しているだけなのだ」

長男 「ところで、誰かが金貨を借りに来るとき、実際に、金貨を持って帰る人はいないよな」

次男「そんな、面倒なこと、今頃、する人なんていませんよ」

長男「だけど、たまに、金匠手形を、金貨と交換しに来る人はいる」

次男「そうですね。理由は分かりませんが、たまに金貨を拝んでみたい人がいるのか、現物主義なのかは知りませんが、確かに、少なからず、いることにはいます」

GSJ「取り付け騒ぎのことを覚えているかな?」

長男「はい。私は、まだ小さかったですが、あの大騒ぎで、お父さんが家に全く帰ってこなかったので、はっきりと覚えています。お母さんは、外出できず、閉じこもっていました。弟たちは、幼すぎて記憶にはないと思います」

GSJ「あの時、私たちの秘密が、バレかけたんだよ、あの秘密が」

長男「秘密って何ですか?」

GSJ「秘密を話す前に、もう一度、話を整理しよう。私たちは、皆さんの金貨を預かっている。それは事実だ。しかし、預かっていると言うと、これから話すことの意味が半分も伝わらない。私たちは、金貨を預かっているのではなくて、借りているんだ。その証拠に、その預かった金貨に対して、利子を払っている。ほら、これが、借りている証拠だ。皆んなは私たちに金貨を預けているのではなく、金貨を貸しているから、もう、取り付け騒ぎの心配は、少ないのだ」

長男「そうか!人々が金貨を取りに来ないのは、貸して、利子をもらっているからなんですね」

GSJ「そうなんだ。ほとんどの人が、金匠手形を便利だから使っている。それは、一つの事実の側面だ。これから、秘密を少しづつ話していくことにしよう。よく聞け、息子たちよ。人は、自分の損得で考えているうちは、真実を見ようとはしないのだ。目の前にあるのに、見えない。人々は、このように思っている。金貨を、できるだけ預けていた方が、私たちに、貸している方が、利子で得をする。だから、必要のない限り、取りに来ない。それが、人間の特性なんだよ。行動パターンなのさ。しかし、人々は、利子をもらうと言う行為を、心のどこかで汚いと思っている。だから、貸しているとは言わないのだ。預けにいくと言うことで、その行為を、自分なりに、正当化しているのかも知れないな」

長男「これって、すごい話ですね。人は楽をして、儲けたい。多分、これからの時代は、このように、金貨で金貨をつくるような世の中になって行く。そして、金貨は実態ではなくなる。そう、偶像のように、信仰の対象のなるのかもしれない。父さんは、それに気づいて、少し怖くなっていたんだ。だから、今まで誰にも言わずにいのですね」

次男「ちょっと、怖い話になってきたけど、それって、実際には、ない金貨を貸すことができるって話になるのかな?」

GSJ「そうなるんじゃなくて、もう、すでになっているんだよ」

次男「私たちが借りている金貨は、300億枚。そこで、発行した金匠手形は、450億枚分でした。450億枚分の金匠手形を、発行したのに、150億枚分の金貨を貸したと言うのは、どういうことですか?」

長男「父さんが金匠手形には2種類あると言った話は覚えているな?俺たちは、それを何と呼んでいた?」

次男「はい。金匠手形、預り証ですよね」

GSJ「そうだな。その古い呼び方が、私たちの理解を妨げ、他の者には真実を隠すことになっている」

長男「あれは、預り証ではなく、借用書だ」

GSJ「そうだ。あれは預り証ではなく、借用書、特定の人に、特定の行為や支払いを請求できる権利、金貨の支払いを求める権利になる」

次男「なるほど。私たちは金貨を預かっているのではなく、借りている。だから、預り証を発行しているのではなく、借用書を発行して渡していたんですね。それは理解できました」

GSJ「そうだ。これからは、金匠手形ではなくて、借用書と呼ぼう」

長男「そうか。もともとは、俺たちが貸していた金貨は、俺たちの金貨だったんだよ。だって、そうだろ、誰かから預かった、金貨を勝手に貸すことはできないんだ。当時は、倫理的にも、物理的に不可能だったんだ」

GSJ「そうだな。例えるのが難しいが、もし、我々が、犬や猫を預かるサービスをしていたらと考えてみるといい。預かっている動物は、いつか必ず、飼い主が引き取りに来る。だから、いくら沢山預かっているからと言っても、貸したりすることはできない。預かり料をいただいていたから、その必要性もない」

次男「そんなことは、僕にでも分かる。金貨と犬や猫は違うし、また、それぞれ、大きさも色も、違うから、無理だよ」

長男「そうだな。金貨は、誰かの金貨とか、そう言う類のものではない。枚数さえ間違っていなければ、問題は起こらない。記念コインでない限り、関係ない話だ。それに、それは、特殊なケースになるから、預り料を頂かなくては、いけなくなる。全く、別の話になる」

GSJ「我々は、金貨を借りて、借用書を、その相手に渡している。それは、犬や猫の写真を渡しているようなもんだ。その子は元気ですよ。大事に、お預かり、いや、借りてますよと言うような感じだ。さらに、犬や猫のように区別もない。ただの、金貨の枚数だけ、数字が書いてあれば、それだけでいいんだ。ただ、取り付け騒ぎの可能性は、ゼロではないから、注意しないといけないがな」

長男「お父さん、そこなんです。取り付け騒ぎの内容は、なかなか聞けない話でした。あの時、どのようなことが起きたのですか?」

GSJ「あの頃は、ゴールド銀行は、3つの支店があった、一つは、おじいちゃんの本店、一つは、おじいちゃんの兄貴の支店。そして、私の支店だ。叔父さんは、おじいちゃんから支店を任されていたが、兄貴だから、なかなか言うことを聞かなかったのだ」

次男「そうなんですか。すごく大人しくて、優しいおじさんだと思っていました」

長男「それは、取り付け騒ぎで、おじいちゃんや、お父さんに、大きな迷惑をかけてしまった後の話だよ。あの事件で、皆んな殺されそうになったのだから、相当、反省したんだと思う」

GSJ「叔父さんを責める話をしたいのではない。あの叔父さんのお陰で、我々は、今、大きな決断ができるのかもしれないんだ。また、実際、今、叔父さんがやっていたことを、我々もやっている」

子供たちは、皆、真剣に話を聞き出した。

取り付け騒ぎ

取り付け騒ぎが起こった頃の、ゴールドスミスの銀行を G1 銀行、ゴールドスミスの兄貴の銀行を G2 銀行、ゴールドスミスJRの銀行を G3 銀行 として、話をします。

G1銀行G2銀行G3銀行
借りた金貨(預かった金貨)1億枚1億枚1億枚
発行した借用書(金匠手形)3億枚分10億枚分5000万枚分
自分の金貨5億枚00

G1 銀行は、歴史も長く、おじいちゃん自身の金貨がたくさんあったので、おじいちゃんは、自分の金貨の分だけ、借用書を発行していました。誰かから借りている金貨については、基本的に、貸すことはしていませんでした。そこまで、金貨を借りに来る人がいなかったため、ボランティアのようになっていたのです。金貨を預かって、利子を払うのですから、慈善事業と言っても良いくらいでした。おじいちゃんは、年齢的にも、引退が近かったため、のんびりビジネスができれば良いと考えていたのです。

G2 銀行は、他の二つの銀行に比べて、なぜか、発行された借用書の多い銀行でした。親族は、多分、たくさんの金貨を預かっているから(借りているから)、たくさんの借用書を発行できるのだと考えていました。

ゴールドスミスJR が経営する、G3 銀行は、少し違ったやり方をしていました。あの幼馴染みの一件以来、預り料はもらっていません。金貨は預かっているのではなくて、借りています。利子を払っているので、堂々と、貸付けをおこなっていました。しかし、借りている金貨を全部貸すことはできません。誰かが、いつ、借用書を持って、金貨と交換してくれと言いにくるのか分からないからです。ですから、ゴールドスミスJRは、借りている金貨の半分だけ、金匠手形を発行することにしていました。誰かが、借用書を金貨に交換する可能性があるからです。その支払うための金貨を、準備をしておかなければならないからです。このような状態を、支払い準備率50%と言います。

具体的に言うと、G3 銀行には、1億枚の金貨を借りていました。ですから、5,000万枚を限度に金匠手形を発行できる状態で、運営されていました。その頃は、金貨に交換する人が、まだいたので、十分に対応できるように、安全策をとっていたわけです。

しかし、ゴールドスミスの兄貴は、とんでもない経営をしていました。G2 銀行にも、1億枚の金貨がありました。しかし、10億枚分の借用書を発行していたのです。物理的な限界を考えると、1億枚分の借用書を発行することしかできません。それなのに、その10倍の金貨を貸していることと同じことをしていたのです。

それでも、ある程度の期間、何の問題も起こりませんでした。10億枚分の借用書が、一度に、銀行に持ち込まれることはなかったからです。経済が安定していて、金貨に交換する必要が特にない場合は、また、その秘密が外部に漏れさえしなければ、発行された借用書の十分の一である、1億枚の金貨さえ、金庫の中にありさえすれば、十分だったのです。

しかし、G2銀行に勤務する男は、そのことに対して、違和感を覚えていました。彼は、10億枚の借用書を発行しているのに、何で、G2 銀行の金庫は、こんなにも小さいのだろうと、考えていたのです。どう考えても、数億枚しか入らないような大きさの金庫に、どうやって、それ以上の金貨を保管できるのだろうと思っていました。そのことを怪しんだ、彼は、「金庫の中には、金貨はないぞ」と町中に噂を流してみました。

そして、あの大事件、取り付け騒ぎが起こったのです。噂はすぐに広まり、町中の人が、俺の金貨を返せと、G2 銀行に押しかけました。銀行の前には、大行列が並びました。一人ひとりの借用書を確認して、倉庫から金貨を持ってきては、金貨を支払う。それだけの作業で、銀行員は、手がいっぱいです。そのようなことを想定してはいなかったため、行列は、短くなるどころか、どんどん長くなっていきます。ゴールドスミスの兄貴は、甥っ子のゴールドスミスJR と、弟のゴールドスミスに、助けを求めました。

G2 銀行の倉庫が、もう、空になってしまう寸前、運よく、日が暮れてきました。それに合わせて、並んでいた人も、少しづつ諦めて、帰って行きました。多分、明日の朝一番に、また、金貨を返してもらうつもりなのでしょう。

それから、数日間は、朝から夜まで行列が続きましたが、G2 銀行の金庫には、毎日、G1 銀行と G3 銀行から、金貨が運び込まれていたため、金貨の支払いは、なんとか可能でした。そのようなことが、一週間ほど続き、金貨が7億枚ほど支払われた頃、次第に騒ぎは治まっていきました。

それから、数ヶ月経つと、ほとぼりが冷めたのか、G2 銀行に、金貨を預け(金貨を貸す)に来る人が現れて始めました。そして、一年もすれば、何事もなかったようになりました。

GSJ「あの時は、親族一同、殺されるかもしれないと思っていたよ。数ヶ月間は、ビクビクしながら時を過ごしていたものだった」

長男「本当に事なきを得て、良かったですね。お父さん」

GSJ「私の金庫にある金貨だけでは、全く間に合わない状態だった。おじいちゃんが、自分の金貨を大量に持っていたから、大丈夫だったんだ。実際は、もう、ギリギリのところまでいったんだが、本当に、運が良かった」

長男「なるほど、このような経験から、お父さんは、支払準備率を設け、私たちの銀行に守らせるようにしているのですね」

次男「なるほど、それで借用書の発行を制限していたのですね。今日まで、理由がわかりませんでしたが、だんだん話が見えてきました」

長男「僕たちが借りている金貨の総数は、300億枚でした。そして、発行した借用書は、450億枚でした。だから、450 − 300 = 150 だから、150億枚分の金貨を貸しているのと同じことになるんですね」

次男「分かってきたと思ったら、また、分からなくなってきたぞ」

GSJ「ここからが本番だ。最初に、金匠手形は2種類あると言ったな。いや、借用書は、実質、2種類あるんだ。ここは難しいから、ゆっくりと聞いてほしい」

ゴールドスミスJRが、子供たちに説明した内容はこうでした。

まず、金貨を預かる時の話をします。銀行にとって、金貨を預かるというのは、借りると言うことでした。その当時は、渡したのが「預り証」、「金匠手形」だと説明するのは、仕方がありません。実際に、預かったのですから。

しかし、ここでは、現代のお金について深く理解するために、複式簿記として理解しなくてはいけないのです。

「Aさんが銀行に100万円預ける」と言う行為は、銀行から見ると、「Aさんから100万円借りる」と言うことになります。

ですから、「Aさんは銀行に100万円貸す」、「銀行はAさんから100万円借りる」と整理できます。

100万円貸せた方には債権、借りた方には債務が生じます。

私たちが銀行にお金を借りに行くと、書類にサインするのがそれに当たります。債権とは、貸したお金を返してもらえる権利のことで、債務とは、借りたお金を返す責任、務めがあると言うことです。

しかし、私たちが銀行にお金を預けたからといって、債権証書をもらったりはしません。代わりに、通帳に記録されるだけです。

ただ、私たちが個人的に誰かにお金を貸す場合は、借りる相手に、用意した借用書にサインしてもらいます。その借用書は、貸せた方が受け取り保管します。それが債権になります。

ゴールドスミスJRが言っていた、実質上、金匠手形は、2種類あると言うのは、そのことだったのです。

もともと、ゴールドスミスのおじいさんが、金貨の預かり業をしていた頃は、ただの預り書を発行してればよかったのですが、銀行業になった頃には、現代の紙幣のようになっていました。

ですから、誰かがゴールドスミス銀行に、金貨を預けに(貸せにきた)時には、借りたと言うことで、債権である借用書を発行していたのです。

そうなると、ゴールドスミス銀行に、金貨を借りにきた人は、どうなるのか?

実際の取引を考えると、こうなるはずです。

ゴールドスミス銀行に、金貨を借りにきた人が、債務をおいます。

ですから、金貨を借りにきた人は、借用書を書いて、ゴールドスミス銀行に渡さなくてはいけません。

そうなると、ゴールドスミス銀行は、金貨を借りにきた人に、何を渡せば良いのでしょうか?

ここが、私たちの理解を妨げる、難問だったのです。

この借用書は、現代で言う、紙幣に当たります。

ですから、金貨を借りにきた人にも、金貨を預けに(貸せに)きた人と同じ、借用書を渡さなくてはいけなくなるのです。

この、借用書は、実質上、債務と債権の記録になっているのです。

ここは、とても難しいので、もう一度、説明します。

ゴールドスミスの金匠手形は、すでに、債務と債権の記録である紙幣になっていると言うことです。ここからは、借用書ではなく、紙幣として話を続けます。

金貨を預けに(貸せに)きた人は、紙幣を受け取ります。紙幣を、ゴールドスミス銀行に持ち込めば、金貨と交換できます。

金貨を借りにきた人も、紙幣を受け取ります。同じように、この紙幣もゴールドスミス銀行に持ち込めば、金貨と交換できます。

ただ、金貨を借りにきた人は、借用書を書いて、ゴールドスミス銀行に渡してあるので、それは、残ってしまいます。

ですから、金貨を借りた人が、紙幣をゴールド銀行に持ち込んだ場合は、金貨を受け取ることもできますが、自ら書いた借用書と交換することになるのです。

金貨を借りにきた人が、紙幣を持ち込んだら、金貨を返したことになるのです。

この借用書は、本人が記念に持っていても構いませんが、使い道はありません。他人の手に渡ると面倒なので、破って捨てるのが得策になります。

実際には、債務と債権という別々の記録が必要になるので、現代では、複式簿記という方法で、記録してあります。

しかし、世の中に、二種類の紙幣が出回ると、使い物になりません。

ということで、金貨を預けに(貸せに)きた人にも、金貨を借りにきた人にも、同じ紙幣を渡すことになるのです。現代の銀行も同じ仕組みです。

支払準備率

話は、戦略会議に戻ります。

次男「父さん、最初から整理しても良いですか?私たちは、金貨を300億枚借りています。この時点で、紙幣は300億枚発行しているわけですね」

GSJ「その通りだ」

次男「しかし、ほとんど、銀行に金貨を時にくる人はいない。もしもの場合を考えて、今までは、その50%にあたる150億枚の紙幣を発行して、貸せていたのですね」

GRJ「そう言うことだ」

次男「父さん、常識的に考えれば、支払準備率は、100%にしなければ、いけないですよね。金貨を300億枚借りているのであれば、貸し出す上限は、300億枚と言うことになります。皆が一斉に、紙幣を金貨に交換してくれと言うことになったら、300億枚必要ですから。そう考えると、支払準備率は、100%でなければいけません。しかし、金貨を使う人もいなくなって、ほとんど、金庫の中に眠っている状態なのですから、父さんは、、、」

GSJ「気づいたな。長年の経験で、支払準備率を50%のしていれば、何かあっても問題にはならない。全ての支店で、一斉に、取り付け騒ぎが起こることは、まず考えられない。また、我々のグループは、8つもの銀行を持っている。あの頃はたったの3つだ。全体として、グループが大きくなっているから、取り付け騒ぎが、どこか1箇所や2箇所で、起こったとしても、グループ全体が保有している金貨で支払いは可能だと言うことになるのだ」

長男「もしかして、支払準備率を、もっと、低くできると言うことですか?」

GSJ「そうだ、ここからが本題に入る。私が、ざっと計算したところ、支払準備率は現在の50%から10%まで下げても、特に問題はないと考えている。支払い準備率を見定めれば、いくらまで、紙幣を発行しても良いか、簡単に計算できるからだ。そうすれば、私たちは、紙幣を発行するために、これ以上の金貨を借りる必要はないと言うことなる。それに、少し考えれば、分かると思うが、世界中の金貨は、有限だ。金鉱山でも掘り当てない限り、金貨の絶対量は増えてはいかない。他国からの金を、どうにか、奪ってでも、持ってくると考えてる人もいるかもしれないが、それは、我々の仕事ではない。我々は、これから、銀行業を、飛躍的に進歩させる。これから、私たちだけの秘密の話をしなければならない。とりあえず、支払準備率は、10%でしばらく様子を見る。その後、世の中の動きを見ながら、支払準備率は、下げていけば良い。そうすれば、紙幣は、さらに発行できるようになり、その利子も増え、我々のグループには莫大な利益が入るようになる」

長男「私たちが借りている金貨は、総数で、300億枚で、支払い準備率10%として、290億枚分の紙幣を発行することができますね」

次男「現在は、150億枚分の紙幣を発行して貸し出していたから、約2倍の利益になりますね」

長男「私がまとめてもよろしいですか?」

次男「兄さん、僕に任せてよ」

GSJ「やってみろ」

次男「はい。私たちは、300億枚の金貨を預かっています。実際には借りています。この時点で、300億枚分の紙幣が発行されます。そして、今までは、支払準備率50%でしたから、150億枚分の紙幣を貸し出していました。そうなると、発行した紙幣は、全部で450億枚分になります。ですから、会議の最初の話になると、発行された紙幣450億枚分から、預かっている金貨の300億枚を引いたら、貸し出しのために発行した紙幣が150億枚分だと計算できたのですね」

GSJ「素晴らしい」

次男「これからは、支払準備率10%になるので、預かった金貨300億枚に対して、290億枚分の紙幣を発行して、貸し出して良いと言うことになりますね」

長男「もしもの取り付け騒ぎのために、ある程度の金貨を残して置くと言うことですね。それを、非常事態、取り付け騒ぎになった時に、使うと言うことですね。しかし、どのように管理するのですか?」

GSJ「私が、我々グループの銀行の最後の砦に当たる銀行、中央銀行を設立することにする。そこに、各支店が借りている金貨を、預かることにする。そうすれば、取り付け騒ぎが起これば、こちらで対処できる」

長男「そうですね。紙幣の発行も、父さんが全てサインすれば、しっかり管理できます」

GSJ「そうだな。私が万年筆で、サインするだけで、金貨をつくっているようなものだな」

次男「誰かが金貨を借りにくるたびに、世の中に紙幣が、お金が増えていくのですね。なんか夢のような話になってきました」

長男「万年筆マネーですね」

この話は、フィクションですが、このように、誰かが金貨を借りにくるたびに、万年筆でサインするだけで、紙幣が発行されていったのは事実です。

時が過ぎていくと、紙幣だけが世の中で回り始めます。そうなってくると、支払準備すら、必要がなくなってきます。ゴールドスミスJRの考え方でいくと、支払準備率の限界は、0%までです。

預かった金貨が300億枚だとしたら、まず、預けた人に対して、金貨300億枚分の紙幣を発行します。そして、支払準備率0%だとしたら、金貨300億枚分の紙幣を発行できることになります。世の中に出回っている紙幣の合計は600億枚分です。ここまでだと、預かった金貨に対して、2倍の紙幣を発行するのが限界だと言うことになります。

そのうち、誰も、金貨を使う人がいなくなります。

そうなってくると、紙幣は、無限に発行できるのではと考えるようになるのは不思議ではありません。誰も紙幣を金貨と交換しないのですから、預かっている金貨の10倍、100倍と紙幣は発行できるのです。

現代の銀行では、支払準備のことを、預金準備制度として、決められています。ゴールドスミスの時の支払準備率と、基本的に考え方としては同じなのですが、そもそも、金貨自体がないので、計算方法が違います。

ここでは、分かりやすくするために、金貨を使いますが、その最初に受けれいた金貨のことを、現代の銀行では、本源的預金と言います。

現代の銀行では、その本源的預金(金貨)に対して、どれだけ紙幣を発行して良いのかを決める数字が、支払準備率です。

詳しい内容については、次の章でご説明しますが、簡単にイメージだけつかんでください。

現代の支払準備率で、紙幣がどれだけ発行できるかシュミレーションします。(金貨1枚の価値は、紙幣1枚にします)

・支払準備率100%の場合 金貨1枚預かると、紙幣を1枚発行して貸すことができる。

・支払準備率50%の場合、金貨1枚預かると、紙幣を2枚発行して貸すことができる。

・支払準備率10%の場合、金貨1枚預かると、紙幣を10枚発行して貸すことができる。

・支払準備率1%の場合、金貨1枚預かると、紙幣を100枚発行して貸すことができる。

・支払準備率0.1%の場合、金貨1枚預かると、紙幣を1,000枚発行して貸すことができる。

・支払準備率0.01%の場合、金貨1枚預かると、紙幣を10,000枚発行して貸すことができる。

このように、支払準備率が小さくなればなるほど、銀行はお金をつくって貸し出すことができるようになります。

計算時代は簡単です。

1÷ 支払準備率 = 本源的預金を何倍に膨らませることができるか?

と言う、計算をすれば良いだけです。

・支払準備率100%の場合、1÷1=1(倍)
・支払準備率50%の場合、1÷ 0.5 =2(倍)
・支払準備率10%の場合、1÷ 0.1 = 10(倍)
・支払準備率1%の場合、1÷ 0.01 = 100(倍)
・支払準備率0.1%の場合、1÷ 0.001 = 1,000(倍)
・支払準備率0.01%の場合、1÷ 0.0001 = 10,000(倍)

このように、支払準備率さえ小さくすれば、本源的預金を、いくらでも膨らませることができます。銀行は、無限のお金をつくることができるのです。


同じカテゴリー(アイディア)の記事

Posted by ノボブ at 15:49│Comments(0)アイディア
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。