2022年06月27日
お金は無限に発行できる 第四章 お金の起源

第四章 お金の起源
お金は、いつ、どの瞬間に誕生するのか?
お金の起源を知ることは、新たな世界への第一歩になります。
子供の頃、家のお手伝いをすると、お小遣をもらったりします。社会人になると、働いて、お給料をもらうことでお金を稼ぎます。
私たちは、何か役に立つことをすれば、お金がもらえるのですが、そのお金は、今、社会にあるお金が、誰かから誰かに移動しているだけです。私たちが、世の中に生まれてきた時には、すでに、お金は存在しています。ですから、お金が生まれると言うことを意識したことはないはずです。
お金と言うのは、すでにあって、私たちは、物を買う時に支払ったり、働いて稼いだり、または、誰かにおごったり、貸したり借りたりしています。
でも、人類が誕生したとされる原始時代に、お金はありませんでした。
私たちの祖先は、お金が無かった頃、それぞれのコミュニティーで自給自足的な生活をしていました。自給自足の生活とは、必要とするものを他に求めることなく、自らの生産でまかない、それを自ら使って暮らしていくような生活です。
日本の縄文時代でも、狩猟採集で、狩をしたり、漁をしたり、貝を拾って食べたり、木の実を拾って食べたりしていたので、多分、お金は無かったはずです。
貝殻が、お金だった時代も、あるかもしれません。しかし、貝塚とは、食べ残しのごみとして出る貝殻と他の様々な生活廃棄物と共に長年に亘って投棄し続けることで、それらが累積した特定の場所です。お金だったら、ゴミと一緒にして、捨てたりしません。
そう、お金はもともと、無かったのです。
宇宙は、何もない所から、超高温、超高圧の火の玉が、いきなり大爆発して生まれたと考えられています。この大爆発のことを、ビッグバン( BIG BAN )と言います。
実は、お金は、毎日のように、バン、バン、バンッと生まれているのです。そして、生まれては消えて、生まれては消えているのです。MMTでは、お金とは借金で生まれると説明していると言いました。誰かが借金をする時に、バンッと生まれるという話です。
人類史上で、初めて、お金がバンって生まれたことを、お金の起源と呼びます。あえて言うと、お金の「グレート・ビッグバン」の話です。
お金を知れば、鎖もなく繋がれていた者が、今度は無いはずの鎖を断ち切ることになります。未来に備えるには、過去を理解することが最優先です。
現在、世界最古の金属貨幣と考えられているのは、紀元前670年頃までさかのぼり、アナトリア半島(現在のトルコ)のリディアの「エレクトン貨」です。
また、世界最古の紙幣は、中国北宗時代(960〜1127年頃)につくられた「交子(こうし)」と言われています。
お金の起源を知るには、銀行の成り立ちを理解する必要があります。
銀行=BANKの語源は、12〜13世紀のイタリア、ローマ・フィレンツェにまで、さかのぼります。
そこでは、金融業者たちが緑の敷物をしいた机の上で金と銀の両替などを行っていました。イタリア語で机は「BANCO」、英語では「BANK」、銀行の語源は、机だったようです。
時を経て16世紀後半から17世紀初頭頃、世界の中心はイギリスに移ります。
その頃、イギリスでは、すでに、個人銀行の業務が商人たちに受け入れられていました。その取引業務があったという記録もあります。
個人銀行家たちは、ゴールドスミスと呼ばれていました。当時の主要な決済手段は金(ゴールド)でしたが、名前の由来はそこではありません。
ゴールドスミスとは「金細工職人」と言う意味です。その金細工職人が銀行業の先駆者でした。
金細工職人が、どうやって、現代の銀行の大元となる仕組みを作り、貸金業を経て、巨大な銀行家になっていったのでしょうか?
その背景には以下のような物語があります。
イギリスでは商業取引が増大し、それに伴い大金持ちが現れていました。たくさんの金(ゴールド)を抱える者が出てきたのです。
大量のゴールド(金)を手元に置いておくと、襲われたり、盗まれたりする危険があります。
大金持ち(大量のゴールド所有者)は、そのリスクを懸念しました。
そして、ロンドンでも一番頑丈な倉庫(金庫)を持つとされたゴールドスミスに、金(ゴールド)を預けることにしたのです。
ゴールドスミスは金細工職人と言う職業柄、大量の金(ゴールド)を保管できる頑丈な倉庫を所有していたのです。
ですから、大金持ちは、その安全な倉庫に手数料を支払う代わりに、自身の金(ゴールド)を預かってほしいと依頼するようになったのです。
ゴールドスミスは金(ゴールド)を預かる際に、預り証を書き、金を預けた大金持ちに渡しました。その預り証のことを『金匠手形』と言います。
金匠手形の匠(しょう)は匠(たくみ)。つまり、職人の意味ですから、名前の通り、金細工職人の手形です。手形は決済の記録です。
多分、金匠手形は、「あなたの金貨を100枚預りました」という文面の書類だったのでしょう。
大金持ちたちは、必要な時には、その金匠手形をゴールドスミスのところに持っていき、金(ゴールド)を引き出していました。
ゴールドスミスは、ただ金(ゴールド)を預かるだけで簡単に儲かるならと、どんどんそのビジネスを拡大していきました。
この時点では、銀行と言うよりは、貸し倉庫業でした。金(ゴールド)を預かっているので、正しくは貸金庫業だったのです。
私の予想ですが、商売繁盛のためには信用第一、ゴールドスミスは、かなりセキュリティには気を使い、警備も厳重にしていたに違いないと思います。安心、安全が担保できなけば、このビジネスは失敗していたはずです。
また、金(ゴールド)と交換できる金匠手形を発行する時、管理上、確認のためにも、ゴールドスミスの手元に同じ内容を記録した書類がもう一枚必要となります。
もしかしたら、複式簿記と呼ばれる、帳面に記録する手法の原型が、ここで、生まれたのかもしれません。
その記帳についても、ミクロネシアのヤップ島にある「フェイ」と言う大きな石や、メソポタミア文明における「トークン(円錐や玉や粘土の円盤)を使用し、取引が行われていた説もあります。
複式簿記の、複式とは、二つから成るやり方のことです。
例えば、大金持ちのAさんが、ゴールドスミスに、金貨を100枚預けたとしたとします。
ゴールドスミスは、「確かに金貨を100枚預かりました」と言う内容を証明する、金匠手形を大金持ちのAさんに渡します。
この取り引きをキチンと管理しなければ、信用は得られず、ビジネスは拡大できません。ゴールドスミスは手元の帳面に、誰から、いつ、どれだけの金貨を、預かったと克明に記録したはずです。
そうすれば、ダブルチェックできますし、万が一、お得意様の、大金持ちのAさんが、金匠手形を紛失しても再発行できます。
また、それが盗まれたとしても、盗人に換金される前に、ゴールドスミスに連絡すれば対応可能です。
このようなことは、商売の基本だと思います。貸し倉庫業を、銀行業まで進化させたゴールドスミスなら、最低でも、このぐらい、いや、これ以上のサービスも考えていたはずです。
金匠手形は金貨と交換できる書類です。さらに、金貨の出し入れもあります。それに、金貨の預かり料で儲かるのですから、そこには、明朗な会計の計算の方法や、特別な記録の仕方が必要になるはずです。
その日の記録だけでなく、お客さん別にカルテも必要です。預り料は、売上になりますから、全体を把握できるような何らかの記録する方法を発明するのは自然な流れでしょう。
そこで、一つの取引に対して、2箇所に記録するのは、必然だと考えます。
このことを、現代の複式簿記では、「記帳」といい、借り方、貸方の二つに分けて、取引を管理します。
ゴールドスミスが、複式簿記を使っていたかどうかは、私の想像の範囲ですが、第五章の、お金のつくり方、『信用創造』を理解するためには重要なことです。
この仕組みは、皆んながお金持ちになるための大切な知識で、私たちが、国や政治家を動かすための強力な武器になるのです。
複式簿記の基本さえ理解できれば、「日本には借金などない」と言うことがハッキリと分かるようになり、お金は必要なだけつくって皆んなに配ることが可能だと理解できるからです。
そして、そのことを、私たちに、そっと教えてくれているのが、ゴールドスミスです。
ちまたでは、悪魔扱いされているゴールドスミスですが、彼の発見から学べば、世界を平和にし、地球を救うことも可能になるのです。
では、貸金庫業を営んでいたゴールドスミスは、ここからどうやって銀行をつくっていったのでしょう?
ゴールドスミスが、金貨を預かり、金匠手形を発行していると、彼の貸金庫サービスは、町中の噂になりました。
大金持ちBさん、大金持ちCさん、大金持ちZさん、町中の大金持ちが、ゴールドスミスに沢山の金貨を預けるようになりました。
そうなると、誰も予想しなかったことが起こるようになります。
ある時、大金持ちAさんが、大金持ちBさんに、仕事上の支払いをしようと、金匠手形をゴールドスミスのところに持って行きました。
大金持ちAさんの金匠手形には、金貨1,000枚と書かれています。
大金持ちAさんは、その金匠手形をゴールドスミスに渡し、支払いに必要な金貨100枚を引き出しました。ゴールドスミスは、受け取った金匠手形を破り捨て、金貨900枚と書いた新しい金匠手形を、大金持ちAさんに渡しました。
金貨100枚を手にした大金持ちAさんは、それを大金持ちBさんに支払います。
後日、大金持ちBさんは、先日手に入れた金貨100枚と、自分の金匠手形を持ってゴールドスミスを訪ねます。
大金持ちBさんの金匠手形には、金貨3,000枚と書いてありました。
大金持ちBさんは、Aさんから支払いを受けた金貨100枚を、ゴールドスミスに預けました。同時に持参した金匠手形を渡し、これも一緒にしてくれるように頼みます。
ゴールドスミスは、「3100枚のお預かりになりますね」と言いかけて、ちょっと黙って計算をはじめました。
「Bさん、今年の預り料なんだけど、今回の100枚も合わせて、金貨2枚になるけど、どうしますか」
少し考えた大金持ちBさんは、「では、そこから引いて支払うから、そのように記載してくれるか」と答えます
「かしこまりました」
ゴールドスミスは新しい金匠手形に、3098枚預かりましたと書いて、大金持ちBさんに渡し、古くなった金匠手形はお互いが確認し、破棄します。
これは一見、現代の銀行業務のようですが、全く正反対の動きをしているところが1つだけあります。
現代、私たちがお金を銀行に預けると、利息がつきます。銀行にお金を預けると、ほんの少しずつですが、預けたお金が増えます。預かってもらっているのに、お金までもらえるのです。
一方、大金持ちBさんは、ゴールドスミスに、預り料として、金貨を2枚支払いました。
ですから、この時点では、また、ゴールドスミスの商売は、銀行業と言うよりも、貸金庫業です。
次に、大金持ちCさんも、ゴールドスミスのところに現れました。新しい家を建てるために金貨を引き出しに来たのです。
大金持ちCさんは、金貨7,500枚と書いてある金匠手形を渡し、2,000枚引き出したいと言いました。
「金貨2,000枚ですか。少し時間がかかります。しばらくお待ちください」
金貨が1,000枚入った袋を二つ、奥の金庫から持ってきたゴールドスミスは、大金持ちCさんと一緒に袋から金貨を出し、お互い確認しながら、10枚づつ重ねて、それを200組つくります。
金貨をわざわざ数えるのは一手間です。
ゴールドスミスは、大金持ちCさんに、数えた2,000枚の金貨と、金貨5,500枚と書いた新しい金匠手形を渡しました。
取り引きが完了し、大金持ちCさんが、金貨が1,000枚入った袋を二つ担いだその時です。ロンドンの町に雷鳴が轟き、大雨が降りはじめました。
「あらあら、大変なことになってしまった」大金持ちCさんは困ってしまいます。
「長雨になりそうだ。中で雨が止むまで待つしかありませんね。お茶でも入れるから奥の部屋で休みなさい」と、ゴールドスミスはお茶の用意を始めました。
二人は雑談をしながら、雨が止むのを待ちましたが、一向に降り止む気配がないまま、日が暮れてきます。
「今日はもう遅くなってしまった。こんな雨で、道もぬかるんでいる。日も暮れたし、最近のロンドンは物騒だ」
大金持ちCさんは、頭を抱え
「ゴールドスミスさん、この金貨2,000枚、もう一度預かってくれ。明日、出直すから」
ゴールドスミスは「そうだね。仕方がないよ。では、金匠手形は、一枚にまとめず、もう一枚書いて、二枚渡すことにしよう。どうせ、明日取りに来るんだからね」と言いながら、さらに新しい金匠手形に、2,000枚の金貨と書いて、大金持ちCさんに渡しました。
大金持ちCさんは、金貨5,500枚と金貨2,000枚の金匠手形を、内ポケットに大事にしまって、少しだけ駆け足で、雨の降る中、家に帰って行きました。
雨も上がった翌日、大金持ちのCさんがゴールドスミスのところへ向かっていると、後ろから、自分の名前を呼ぶ声がします。
「おーい。おーい。Cさん」
声をかけてきたのは、大金持ちCさんの家を建てることになっている建築業者のKさんでした。
「夕べは、突然の大雨だったね。Cさんが、来るかもと思っていたが、あの大雨は無理だ。だから、朝一番で、Cさんの家まで金貨を受け取りに行こうと思ったんだ。2,000枚の金貨は重いからね。二人で、新しい家の相談でもしながら運べば楽しいと思ってね。そしたら娘さんが、ゴールドスミスのとこに出かけたよと言うから、追いかけてきたんだよ」と、建築業者のKさんは、合理的、そして、頭の回転の速いお喋りさんです。
大金持ちCさんと、建築業者Kさんは、連れ立ってゴールドスミスのところへ向かうことにします。建築業者Kさんは、ゴールドスミスに紹介してもらえる良い機会だと考えていたのです。
「ちょっと待てよ」
大金持ちCさんが歩きながら内ポケットを探ると、昨日の金匠手形が入れっぱなしになっています。
「あー、やっぱりだ。2枚持ってきてしまった。1枚は家に置いとかないと、持ち歩いて、無くしたりしたら大変だよ」
Cさんがため息混じりにつぶやくのを聞いていた建築業者Kさんは、興味深げに覗き込み
「ほーっ、噂の金匠手形と言うものか。なんか紙切れが金貨と同じだなんて、時代も変わっていくもんだね。どれどれ、Cさん、1枚見せてくれよ」
一瞬どうしようか悩んだ大金持ちCさんでしたが、上着の内側で2枚の金匠手形を確認し、2,000枚と書いてある方を、建築業者Kさんに渡しながら、「これは、君に渡す予定の金貨2,000枚だ」と言いました。
建築業者のKさんは、金匠手形を見ながら、「これが、金貨2,000枚と同じなんだよな。なんか有り難みがないね。ペラペラで軽いし、やっぱり俺は金貨の重みと輝きが好きだな」と言いたい放題です。
突然銃声が響き渡りました。
道の向こう側から、悲鳴が聞こえてきます。
悲鳴の方向を見ると、今にも倒れそうな婦人を抱える白髪の紳士と、カバンを持って走り去る若い男が目に飛び込んできました。
若い男は銃を所持しているため、周りの人々はなす術もなく立ちつくしています。
大金持ちCさんと建築業者Kさんは、二人に近づき「大丈夫ですか。怪我はありませんか」と助け起こします。
若い男が持ち去ったバッグの中身は果物やパン、ワインで、二人はピクニックに出かける途中だったのだと言います。
そうこうしているうちに警官が現れ、状況を説明した大金持ちCさんと建設業者Kさんは、ふたたび歩きはじめました。
建築業者Kさんは、しばらく何かを考えています。大金持ちCさんは、「ふーっ、今、金貨の入った大きな袋を、呑気に担いで歩いていたら、狙われたかもしれないな。今後は、護衛をつけて金貨を持ち歩かないといけないかもしれない」と自分に言い聞かせるようにつぶやきました。
建築業者Kさんは、「預けるだけでは、足りないな」と、ぶつぶつ言いながら、まだ、何かを考えこんでいる様子です。
大金持ちCさんは、お喋りの建築業者Kさんが、ずっーと黙って歩いているのが気になりましたが、あまりにも何かを真剣に考えている様子なので、邪魔をしないようにほうっておくことにしました。
そうこうするうちに、二人はゴールドスミスのところにたどり着きます。
建築業者Kさんは、初対面のゴールドスミスに軽い挨拶を終えると、自己紹介もそこそこに話しはじめました。
「この金匠手形をあなたに渡せば、金貨2,000枚と交換してもらえるんだよね」
ゴールドスミスは、少し考えて、「Cさんが、私に渡してくれれば、金貨2,000枚を用意するので、あなたは、それを、ここで、受け取ればいいよ」と言いました。
建築業者Kさんは、「それだと、せっかくの話が、上手くいかない。こう言うことだよ。もし、仮に、私が、ここで、2,000枚の金貨を受け取って、家に持って帰ったとしても、しばらくの間は、使うことはないんだ」と言います。
ゴールドスミスは、「それなら、あなたは、Cさんから2,000枚の金貨を受け取って、また、それを預けたらいい。預かり料は、その金貨の枚数と期間で決まる」と答えます。
建築業者Kさんは、「預かり料のことはわかった。今、ここでは、別の話だから聞いてくれ。預かり料は、後からどうにでも取り決めできる話だ。私が言いたいのは、もしかしたら、あなたのビジネスは、もっと皆んなの役に立って、ますます、儲かる話になると思うと言うことなんだ」と力説しました。
そのやり取りを聞いていた、大金持ちCさんは、「そうか。なるほどKさんは、やっぱり天才だね。ゴールドスミスさん、Kさんの話をゆっくり聞いておくといい。これは、皆んなが安心できる社会をつくる話で、そうそう、昨日の雨、そして、ここまで来るまでの事件」と、目を輝かせながら、さっきの話を、興奮気味に話しました。
「そう言うことなんだ。私がCさんに、金貨2,000枚の金匠手形を見せてもらった時に、今回の金貨のやり取りは、その時点で、済ますことができたんだ。わざわざ、毎回、金貨を出しては、預けに来る必要はないと思わないか?この手形を他人に譲渡できるようにすれば、このビジネスは、もっと良くなる」と、Kさんは言いながら、Cさんが手に持ってる金貨2,000枚の金匠手形を自分の手に取り内ポケットにしまうと「こんな風にね。だけど、今回の取り引きは、お互いに知り合いだからできることだ。金匠手形をもうひと工夫、進化させる必要はある」と課題を投げかけるのです。
ゴールドスミスと、お金持ちCさんは、しばらく考えて、お互いに顔を見合わせたりしました。そして、二人は相談をはじめました。デザインを良くして、耐久性の強い紙を使ってとか、確かに、金匠手形は、進化していくような雰囲気で盛り上がっています。
そこに、常連の、大金持ちAさんが金貨を666枚持って現れました。それを、ゴールドスミスに預けにきたのです。ゴールドスミスは、「ゾロ目だね」と言いながら、さっき考えたデザインを早速試したいのか、新しい金匠手形の真ん中に大きく666と書いてみました。それを横目で見ていたお金持ちのAさんは、「私の方からみると、999に見えるよ。あと一枚金貨があれば、1,000って書いてくれると覚えやすい」と笑いながら言った。
ゴールドスミスは「Aさん、あんた今日は預けるための金貨だけしか持ってきていないのかい」
少し慌てた大金持ちAさんは、財布を開きながら、「そうそう、ここに、確か、ほら、あった。900枚の」と金匠手形を取り出して、ゴールドスミスに見せました。「666と900だから、うん、1566だから」と言いかけて、少し考えはじめた。しばらくすると、「キレが良いから、1000と566で、2枚の金匠手形を書いてくれると嬉しいな」
ゴールドスミスは「Aさん、あなたは毎月一回、Bさんに金貨を100枚届けてるよね。もし、例えばだけど、1000枚と456枚、100枚と3枚の金匠手形を受け取るとことにしたら良いのでは」と提案をした。
少し離れたところで、聞き耳を立てていた建築業者Kさんが沈黙を破って話に割り込んできた。「1000と、100、100、100、100、100、66で7枚の」と言っているすぐ横から大金持ちCさが「Aさん、そうしなよ。そして、金貨100枚の金匠手形は、誰かは知らないが」
その時、そこにいた全員は、目を合わせて、「そうだ、直接、渡せばいい」
このような出来事があったかどうかは知りませんいが、多分、紙幣は、このような自然現象から生まれたのかもしれません。
後日、大金持ちAさんから、金貨100枚の金匠手形を受け取ったBさんは、コロンブスの卵みたいだと言ったそうだ。その話を聞いた建築業者Kさんは、「その卵は、コロンブスの卵と同じかは分からなが、何かが、何かが、生まれる予感がする。それが良いことなのか悪いことなのか分からないが、社会が変わることは確かだな」と言いました。
時は流れて、ゴールドスミスの貸金庫は大繁盛し、預かっている金貨も、あの頃の何倍にもなっていました。商売の方も右肩上がりの中、事業は、ゴールドスミスJRに引き継がれました。
ある朝、ゴールドスミスJRは、金庫にところ狭しと積み上げれる金貨を見ながら、事業の拡大について考えていました。新しい金庫をつくろうか、建て替えが必要か、または、別の場所に引っ越しか、利便性、安全性、頭の中も、金庫の中も、金のことで、いっぱいいっぱいになっています。
この儲かる仕組みは、ただ金貨を預かるだけです。先代からの事業に、競争相手はいません。基本、お金に悩むことがないゴールドスミスJRには、愛に費やす時間がたっぷりとあったため、子供が7人もいました。
ゴールドスミスJRは、子供が大好きでした。子供たち全員にも、おじいちゃんに負けないぐらいのお父さんになりたいと思っています。
そんな時です。ほとんど同時に、二人の男が入ってきました。一人は幼なじみの大金持ちDさん、後一人は、初対面のXさんです。
Dさんは、店の外の方に、数人の男たちを待たせているようでした。話を聞くと、2万枚もの金貨を預かって欲しいとのこと。そして、もう、ここまで持ってきてあると言うのです。
とても嬉しいビジネスの話ですが、いきなり、こんなタイミングで、こんな沢山の金貨を預かるスペースはありません。
いろいろ考えて、仕方がないので、金庫を整理して、とりあえず、詰めれる所には詰めて、廊下から、なんやら、なんとか、預かることができました。幼なじみの大金持ちDさんは、喜んで帰って行きました。
初対面のXさんは、貿易船で有名な会社の社長さんでした。昔からお互いの親同士も知り合いのようでした。今まで会ったことがないのは、Xさんは外国を渡り歩いていたからでした。Xさんの話はとても興味深く、世界はどんなに広いのかとワクワクさせられたゴールドスミスは、Xさんのことを大好きになりました。
Xさんには、いろんなビジネスアイデアがあり、そのために、金貨(お金)が必要だから貸してくれと言う話でした。
そんな出会いをきっかけに、ゴールドスミスは、金庫に増え続ける金貨に困っていたので、ここで、金貨を貸して、利子をもらうと言う、貸金業をはじめる決意をします。同時に、ゴールドスミスJRは、事業拡大を夢に、子供たちを外国に留学させることにしました。
ゴールドスミスJRの子どもたちも大きくなり、ヨーロッパ中に、事業は拡大していきました。ゴールドスミスJRは、子どもたちに、毎日、金庫の中にある金貨を動きを報告させていました。
そして、ある事実に気づきはじめました。事業が広範囲に広がり、沢山の人が、金匠手形を使うようになればなるほど、金貨を貸し出せば貸し出すほど、金貨は金庫に戻ってくるようになります。金匠手形が信用されれば、されるほどに、いろんな産業が生まれ、経済は発展し、人々の暮らしは良くなっていきました。そして、金庫の中の金貨は、ほとんど引き出されることはなく、眠ったままでした。
ゴールドスミスJRは、自分が神になった気分になっていた頃です。幼なじみの大金持ちDさんが、ゴールドスミスの悪口を言はい回るようになりました。
「あいつは、本当に、こざかしい奴だ。子どものころからそうだった。俺が預けた金貨を、許可も得ないで貸し出してる。その利子で大儲けしてるなんて、何て悪い人間なんだ。聖書にも、金貨を貸す時には、利子をつけてはいけないと言っている。人のビジネスにケチをつけるつもりはないが、人から預かっは金貨で儲けているのに、預かり料を取るなんて、なんかおかしな話ではないか。俺が、沢山の金貨を預けてやった恩を忘れて仇で返すような仕打ちだよ」
悪い噂は、ヨーロッパ中に広まりました。新聞などでも、この問題は取り上げられて、ゴールドスミスJRと子どもたちは、世間の人々に追い詰められて行きます。
そして、ゴールドスミスJRは、預り料をとることを止めることにしました。事業も大きくなれば、時代も変われば、自分たちも、それに合わせていかないといけません。ゴールドスミスJRも、幼なじみの大金持ちDさんの話にも一理あると反省しました。
皆さまの金貨を預かっているのではなく、運営させていただいているんだ。皆さまが、私を信用してくれたから、子どもたちにも良い暮らしをさせることができたんだと考えました。
感謝の気持ちを、今度は、皆さまにお返しする時がきたのだと感じたゴールドスミスJRは、さらに大きな決断をします。
預かった金貨の預り料を廃止するだけでなく、逆に、こちらから、利子もお支払いするようにしよう。
ゴールドスミスJRは、そのことを、子どもたちに話しました。何人かは大反対しましたが、結局は、そうするしか、信用を回復する方法はありませんでした。
ただ、まだ、誰も気づいてはいませんでしたが、これが、世界で、現代の銀行が生まれた瞬間でした。まだ、不完全な状態でしたが、ある一つのこと以外は、全く、現代の銀行と同じものが生まれました。
ゴールドスミスJRは、あることに気がついていました。そのことで、眠れない夜が続いていたのです。
「お金は無からつくれる」
歴史はそのことを見守っているようでした。
ゴールドスミスの子どもたちは、事業の立て直しに一生懸命です。理由は、今まで事業の柱の一つであった預り料が全く入らなくなったからです。金庫の中には沢山の人から預かった金貨が眠っています。時代とともに、安全管理や警備の費用もかかるようになりました。
この後に、お金はモノから別の何かに進化することになります。
商業が拡大して銀行が生まれました。当初の銀行はゴールドスミス家族のように親族をベースにした会社でした。その後、職員を持つ大銀行になっていきます。さらに、銀行は、預金された資金や自己資本を用いて融資を行い、利益を拡大していきます。本格的な資本主義が現れる前の時代のことです。この資本主義に近い形態を、商業資本主義と言います。
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