第五章 お金のつくり方
お金はどうやってつくられるのでしょうか。
私たちは、お金をつくったことがないので、想像することができません。
でも、目玉焼きは、どうやってつくりますかと聞かれたら、簡単に答えられるはずです。
スーパーで卵を買ってきて、家の台所で、フライパンを用意し、コンロに火を入れ、油をひいて、よく温めます。卵を割って、中身をフライパンに落として、焼いたら、できあがりです。
モノづくりでは、目で見て、触れて、何かを切ったり、焼いたり、固めたり、さらに身体も使い、体験しながら学べます。
体験できること、また、体験したことは、言葉だけで説明されたとしても、頭の中でイメージできるので理解しやすいのです。イメージできるのは、頭の中にあるからです。
頭の中でイメージできる現象は、目に見える、もしくは見えたからです。見たモノは、頭の中に入ってきたものです。そして、頭の中に材料さえあれば、イメージしながら、モノをつくることは可能です。イメージしながら、実際に組み立てたり、料理したりできるのです。
しかし、現代のお金はモノではなく、数字の情報です。情報は目には見えないので、そのつくり方は、目玉焼きのように理解することは難しいでしょう。
モノという形があれば、自然にイメージできるため、意識する必要もなく、信用できるし、安心できるのです。頭にも脳にも、心にも、ストレスがありません。
本よりも、絵本や漫画が、読みやすく、おもしろいのと同じです。
人は、目に見えないものは、なかなか信用することができません。自分にも見えない、他人にも見えない。誰にも見えないのですから、仕方がありません。
見えないものをつくる話は、安心できません。信用もできません。
ですから、現代のお金をつくる話を考える時、大変なストレスがかかります。
昔のお金は、金貨や小判でした。その材料である金は目に見えるし、手に取れて、輝いて綺麗なモノです。見えるモノで見えるモノをつくる。金貨や小判のつくり方を説明する場合には、ストレスはないと思います。
何かが、お金になるためには、何かをお金として利用するためには、誰もが安心し、信用できるイメージが先にあると言うことです。
現代のお金は、数字の情報です。情報ですから実体がありません。その情報は、無から生まれます。
現代のお金のつくり方、信用創造は、無から情報をつくる手順の話になります。
だから、現代のお金のつくり方と言われても、質問の意味さえ分からなくても当然の話なんです。
犬や猫には、お金という認識はありません。猫に小判と言う諺があるように、意味がないことだからです。
目玉焼きをつくったことがあれば、卵焼きもつくれるし、蕎麦、うどん、スパゲッティ等、料理という応用もできます。そうやって経験を積んでいけば、次第に、難しい料理もつくれるようになります。
モノづくりは、つくり方、手順、が基本です。手順が見えて、頭の中にイメージできれば、それをつくることができます。
昔のお金はモノでした。
代表的なものは、金貨や小判です。
材料は、金です。金は価値のあるモノです。世界中の人が認めています。誰もが信用しています。
金貨や小判が信用されて、お金として相応しいと考えられるのは、材料である金そのものにある種の信用があるからです。
お金には、信用が必要だと言うことです。
お金をつくると言うこと。
一番、分かりやすく、説明がしやすく、皆さんが納得するモノは、金貨や小判です。
金貨や小判は、金を溶かして、型に入れてつくります。さらに、純度や重量を、国や政府が補償すれば、皆んなは安心して、ストレスなく使えますし、信用もできます。
信用されたので、金貨や小判は、お金として、皆んなが使うとも言えます。
しかし、現代のお金の基本は数字の情報なので、金貨や小判のように、目には見えません。
目に見えないお金を信用して使っていると言う、不思議な話です。
そこで、日本国は、目に見えないお金を、一部、目に見える紙幣や硬貨にして、国民に提供します。
そして、壱万円札や100円玉は、誰もが心配せずに使っています。目に見えて、形があるあるから、信用して使っているのでしょうか?
本当は、信用して使っているのではありません。
信用するもしないも、その必要がないのです。使えるから、使えたから、無意識のうちに、お金として使っているだけです。
私たちは、貨幣制度ができた後の社会に、遅刻して生まれてきた子供のような存在です。お金が、すでにあっただけの話です。
現代のお金の信用は、ただの習慣から生まれた信用です。
信用され、皆んなが安心して使えるお金のことを経済学では「信用貨幣」と呼びます。現代貨幣は「信用貨幣」なのですが、無意識に使っているので、習慣貨幣なのかもしれません。
実際に、100円玉を自動販売機に投入すれば、缶コーヒーを買うことができます。缶コーヒーは、その中身に価値があります。飲みたいという気持ちもプラスされて、等価交換されたと言うことです。
これは、お金の交換機能と呼ばれ、お金の役割の話になります。
それは、お金は、世の中のマーケット、市場で売られている全ての商品やサービスと交換できることが必要であると言うことです。
また、お金は税金によって裏付けされていると言う考え方もありますが、第十章「お金の機能、税金の役割」の方で、まとめて解説します。
お金には、信用が必要です。
信用とは、受け入れると言うことです。例えば、人は、人の実績や肩書き、行動を見て、その人を信用します。
私たちは、子どもの頃から、百円玉で、ジュースやお菓子を買っているので、百円玉を受け入れる、受け入れた、信用したと言うことになっています。
百円玉については、体験して、経験を積んだため、信じる努力、理解する必要はなかったのです。
私たちは、現代のお金に慣らされ、適応しています。実体のないお金も使いこなしています。ATMを使って、県外や外国にだってお金を送金しています。
無意識のうちに、見えない数字の情報であるお金を使いこなしています。
お金とはエネルギーだ。お金とは愛だと言う人がいますが、確かにそうです。見えなくても観察可能な力だからです。
現代のお金を考える時、現代のお金のつくり方を学ぶ時、それは観察可能な力であると前もって知っておけば、それほどストレスがかかる話でもないと思います。
現代のお金は、数字の情報です。情報は概念で、みんなが共通して思うもの、受け入れていることです。
目に見えなくても、観察可能な力であれば、すんなり受け入れることができます。
車がなぜ走るのかは考える必要はありません。エンジンがなぜ動くのか、なぜタイヤが回るのか、なぜガソリンが燃えるのかに疑問を持たないのは、観察可能な力だからです。
現代のお金も、見えなくても、使える、動いているから、観察可能な力が働いています。
お金の観察可能な力が働くことで、社会にお金が増えると、景気が良くなるインフレになり、反対にお金が減ると、景気が悪くなるデフレになります。
景気を良くするためには、皆んながお金を使えるようにすることが大切です。
お金は使える、使っているからお金なんです。だから、いまさら、どうやってつくるのかと言う話は、誰も話題にしないのです。
それでも、お金をつくる話は、現代人にとって積極的に議論されるべき最優先の課題です。
皆んながお金持ちになるために、皆んなが受け入れる必要があります。
皆んながお金持ちになって、主体的に動く必要があるからです。
お金は、皆んなが動くために必要です。
お金は、社会を、経済を動かすために必要です。
お金は、そのためのエネルギーで、見えなくても観察可能な力です。
お金は、力を持った観察可能な情報で、皆んなが受け入れた概念です。
皆んなが受け入れることができるのは、「お金の本質が感謝」だからです。
MMT理論を勉強した人で、「お金の本質は借金だ」と言う人がいますが、「本質」が「借金」だなんて、悲しい話です。間違っているわけではなく、それを言うなら「お金は借金でつくられる」は、「本質」ではなく「手順」の話だということです。
お金の性質は「数字の情報」で、お金の本質は「感謝」です。お金の機能は「交換や価値の物差し」などで、お金は借金でつくられるは、「手順」の話だと言うことです。
・お金の本質は、「感謝」・・・第七章
・お金の正体(性質)は、「数字の情報」・・・第三章
・お金の機能は、「交換や価値の物差し」・・・第十章
・お金をつくる手順は、「借金」・・・第五、六章
社会で人が動くと経済が活動します。
人が動くためには、ご飯を食べたり、野菜をつくったりする必要があります。
さらに、卵を買ったり、お米をつくったり経済を動かすためには、お金が必要です。
畑を耕すトラクターを動かすためには、燃料が必要で、ガソリンを買うためには、お金が必要です。
人が動くためには、食べなきゃならないし、つくらなければいけない。
仕事をするためには、移動したり、シャワーも浴びて、洋服を着なくてはいけない。
誰かがパソコンを組み立てて、ゴミを処分しなければならない。
誰かが動くためには、皆んなで協力しなければいけない。
協力するためには、いろんなものをつくるだけではなく、いろんなものを交換しなければいけない。
ただ食べて仕事して寝るだけの生活はつまらないからスポーツをしたり、ネイルも必要。
そして、人の好みは、人の数だけあるから、いろんなサービスが生まれる。
ものやサービスは交換されるから、与えたり与えられたりしている。
そんな、取引の間に、お金が使われているのです。
お金は、取引の手段です。
その使い方が間違っているのは、お金が必要だからと言って、道路を掘り返したり、仕事が必要だからと言って、綺麗な海を埋め立てたりすることです。経済の大前提が間違いだからです。
お金のために兵士になる国があります。息子のために命を捨てる母親がいます。
愛する家族のために外国人を殺す兵士もいます。怒りに震える孤独な少年の未来は、復讐への道が広がっていきます。
人類は、なぜ、悲劇を繰り返すシステムなのでしょう。なぜ、戦争はなくならないのでしょう。
お金が足りないと、愛が特定の範囲内にしか機能しないからです。
お金や、そのための仕事を目的にすると、無駄な経済活動ばかりになって、時間ばかり浪費して、その利益を争いながら、地球を痛めつけてしまいます。
目的が手段を正当化する時に、私たちはお金をコントロールできなくなり、お金の奴隷になってしまいます。
貧しい社会は、貴方を常に平凡であるように教育します。自分が特別ではないと信じさせらた人は、働く意味をお金に結びつけて動けなくなります。
経済活動は、複雑で、常に動いている。だから、物々交換よりも効率が良い、お金を使うようになったのです。
お金そのものは、悪ではありません。たくさん集まると大きな力になります。
誰かが独り占めすると権力になります。しかし、皆んなで使えば感謝になります。
お金は皆んなでつくれるから、愛になれます。しかし、皆んながお金の「正体(性質)」、「本質」、「機能」、「作り方の手順」を分けて考え、正しく理解しなければ、お金は勝手に暴走を始めるのです。
現代社会で、私たちはお金をコントロールできなくなっています。現代貨幣は、暴走貨幣になってしまっています。
なかなか納得できないにしても、その重要性が分かりにくくても、現代貨幣は情報です。
いくら、現代のお金はモノではなく、数字の情報だと言われても、頭で分かっても、それでも、すぐに、実感が湧いてこないのは、本当に仕方のない話です。
それでも、皆んながお金持ちになって、お金をコントロールして、暴走を止めるためには、現代のお金のつくり方に向き合う好奇心が必要です。
お金のつくり方を、楽しみながら理解すれば、私たちは、すぐにでも、お金持ちになれる事実が、そこにあります。
事実なのに、常識になっていないのは、イメージがしにくいためです。あとは、あまりにもお金に執着しすぎて、崇拝したり、恐れたり、嫌っているからだと思います。
お金は悪魔になったり天使になったりできますから、どうせだったら、天使になってもらった方が良いと思いませんか?
そうやって考えると、ゴールドスミスは、そこまで悪者にする必要はなく、現代のお金を、掘り当てた、歴史上の人物と言う話になります。
一般の人にお金のつくり方を聞くと、「造幣局でつくる」「財務省がつくる」「政府がつくる」「日銀(日本銀行)」がつくると言った回答が出てきます。どれも、間違っていないようです。しかし、それは、どこで、つくるのかと言う話です。
第一章で、MMT議論が話題になったことを書きました。そのため、ある言葉を耳にするようになったと思います。
「お金は借金によってつくられる」
はじめて、この言葉を聞く人は、世にも奇妙な話、一体何のことなのか、さっぱり分からないでしょう。
そこで、経済学の本を読んだり、YouTubeで勉強したりすると、さらに、意味が分からなくなります。
「お金は債務と債権の記録です」
「お金は貸借関係の現象によって生まれる」
こうなってくると、諦めるか、逃げるか、忘れてしまうか、イライラする気持ちが湧いてくるかもしれません。
それでも、この辺りの話は、MMT理論の中の、とても大切な部分です。
MMT理論(現代貨幣理論)を、しっかり理解すると、
「お金は借金によってつくられる」
「お金は債務と債権の記録です」
「お金は貸借関係の現象によって生まれる」
この3つの表現は、確かに、なるほど、と理解できます。
ただ、理解が浅いと、怒りに変わることもあります。それは、借金と言う言葉のネガティブなイメージからきているものです。
ガリレオが地球が回っていると言った時、彼は孤独になったことでしょう。どんなに理屈を並べられても、地面は動いているようには見えません。さらに、皆んなが信じている宗教とは、違うことを言っているのですから、誰も考えようとはしなかったのです。
ガリレオは、毎日、天体望遠鏡をのぞき、夜空の輝く星を観察していました。木星を観察して、毎日、スケッチをしていて、気づいたのです。木星を回っている不思議な天体(衛星)を発見した彼は、その事実を基に、頭の中で、地球をグルグル回したのです。
ガリレオは、熱心なキリスト教信者でした。キリスト教を否定したわけではないのに、宗教裁判にまでかけられてしまいます。宇宙の中心は地球だと、教えていた神父さんたちも、自分の仕事に忠実だっただけかもしれません。あまりにも宗教の教えが強すぎたのか、信じすぎることの盲点はあると思います。
ガリレオは、ただ、事実を基に、事実を積み重ね、自分の考えを、素晴らしい発見を、未来の私たちに伝えてくれました。
ゴールドスミスも、現代貨幣の秘密を、未来の私たちに、教えてくれています。
ゴールドスミスが、現代貨幣のつくり方、私たちのお金のつくり方を教えてくれます。
そのお金のつくり方を、信用創造と言います。英語では、マネー・クリエーションと単純に言っています。
現代貨幣のつくり方を、貨幣創造ではなく、信用創造と訳した方は、本当に凄い人です。しかし、そのせいで、一般の方に理解されにくいのは、残念に思います。
私は、19歳の時、大学受験のセンター試験のために、信用創造を知り、一生懸命に勉強しました。理解できた、あの時の感動は、忘れません。
信用創造は、禁忌、タブーな話、または、陰謀説のような話だと思われる方がいます。それは、単に話を最後まで聞いていないだけで、感情に振り回された結果です。
確かに、本を読んだり、言葉で説明されると、思考はまっすぐな道を走ります。言葉は、左脳で理解されるため、直線的です。そうなるため、突然、トンネルが現れて、真っ暗になると、パニックになってしまいます。
信用創造のトンネルは、「銀行は無からお金をつくり出す」と言う話です。私たちは、汗水垂らして働いているのに、銀行は勝手にお金をつくれるなんで不公平だと言う感情だと思います。銀行はそんな詐欺行為はしていません。複式簿記をしっかり勉強すれば、その誤解は解けます。また、信用創造が詐欺なら、学校の教科書に書かれているはずはありません。「誰かが借金をするときに、お金が生み出される」と明言してあります。ただ、秘密ではないのですが、誰も分かりやすく説明しようとしていないだけです。だから、皆んなが知らない。公然の秘密になっています。
お金は、皆んなが、楽しめば増える仕組みになっています。皆んなが、誰かを信じて応援したり、誰かを慈しんだり、助けたり、自分を信じたり、挑戦するときに、増えるのです。
私たちが社会を信用する時に、お金は創造されます。
それが、信用創造です。
夢が膨らむと、お金が膨らむのです。
こうやって、お金は膨張するのか、だから、お金は膨張するんだ、そして、お金は膨張しなければいけないのか。このように順番に理解できると、真っ暗なトンネルから抜け出すことができます。
この経済格差、富の格差、一見すると解決策がなさそうな資本主義の大問題に直面したとき、私たちの頭脳は「これは諦めろ、不可能だ」と言う考えを拒否して、「もし、お金が無限に発行できるのであれば」と考え始めるでしょう。
だから、皆んなお金持ちになれるし、ならないといけないということを、第十二章「国民基本給」に、書きます。